安全とコストを天秤(てんびん)にかけた結果、危機の連鎖が幕を開けた。(MSN産経ニュース)

産経新聞の電子版が、福島第1原発事故に関して「安全とコストを天秤(てんびん)にかけた結果、危機の連鎖が幕を開けた。」と厳しい。

(1)電源喪失 安全とコストを天秤 2011.4.9 08:28
東日本大震災から1カ月がたとうとする今も、「安全」どころか「安定」すら取り戻せない東京電力福島第1原子力発電所津波による電源喪失、冷却機能の停止、燃料溶融、水素爆発…。次々に襲う「想定外」の事態に対処できず、判断ミスも重なり、危機が連鎖した。なぜ危機を想定できなかったのか。どこかで連鎖を食い止められなかったのか。「天災」なのか、それとも「人災」なのか。7つの場面を検証した。

「最大規模の津波を考慮してきた。想定を大きく上回るものだった」

東電の原子力担当の武藤栄副社長は、3月25日の会見で弁明に追われた。想定した津波は最大5・7メートル。実際の津波は約14メートルに達し、海面から5・5メートルの堤防をのみ込み、同約10メートルの敷地に押し寄せ、海側の発電用タービン建屋に侵入し、地下にある非常用ディーゼル発電機が冠水。1〜3号機ですべての電源が失われた。

東電幹部は「津波の敷地への上陸は想定していなかった」と悔やむが、予見する機会はあった。
平成21年6月に同原発の安全性について議論された経済産業省の審議会。委員の岡村行信産業技術総合研究所活断層地震研究センター長は「約1100年前の貞観地震では内陸3〜4キロまで津波が押し寄せた」との最新の研究結果を受け、対策の必要性を強く訴えた。

だが、東電は「学術的な見解がまとまっていない」と応じなかった。岡村氏は「精度の高い推定が無理でも備えるべきだ」と食い下がったが、審議会も東電を支持した。

「過剰な安全性基準はコスト高につながり、結局、利用者の電気料金に跳ね返ってくる」震災前に東電幹部がよく口にした言葉だ。

国の原子力安全委員会の設計指針も、「電源を喪失した場合、復旧を急げばいいという思想に基づいており、過大な防護への投資を求めてこなかった」(関係者)。
安全とコストを天秤(てんびん)にかけた結果、危機の連鎖が幕を開けた。

連続する記事では、次のようなところも目についた。

  • 原子力技術者は融通がきかず、既存設備に固執しすぎる。広く知恵を借りるべきだ」。復旧作業にかかわるゼネコンの幹部は、こう苦言を呈する。
  • 「東電や政府には物事の先を見通す勘をもった人間がいないのではないか」大阪大学の宮崎慶次名誉教授は、こう総括した。

原子力発電の場合、安全程度をコストでサジ加減したり、「想定外」だからと言うことが、どのような結果をもたらすか、今回の福島原子力発電所の事故は教えてくれていると思えます。