活断層・地震研究センター

独立行政法人 産業技術総合研究所 活断層・地震研究センターのサイトに岡村行信センター長のあいさつが掲載されていました。同氏は、この記事の上に掲載した、MSN産経ニュースがとりあげ、「約1100年前の貞観地震…の最新の研究結果を受け、対策の必要性を強く訴えた」人物です。

独立行政法人 産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター
センター長 ご挨拶
活断層地震研究センター長  岡村 行信(2011年4月1日)

2011年東北地方太平洋沖地震で被災されました皆様に,心からお見舞い申し上げます.また,犠牲になられた方々のご冥福をお祈り致します.活断層地震研究センター設立3年目の2011年度は,つらいスタートになりました.私たちは西暦869年に陸奥の国で発生した貞観津波を研究し,その全体像を解明しつつあると思っていましたが,それは思い上がりでした.貞観地震の再来と考えられる今回の地震は,私たちの推定を越える規模でしたが,それよりも,沿岸域の人々の命を助けることに貢献できなかったことに力不足を痛感しています.

 活断層地震研究センターは,過去の地震を明らかにし,その結果に基づいて将来の地震を予測することによって,地震災害を軽減することをミッションとして活動してきました.そして「地震が起こった瞬間に,私たちの研究の価値が決まる」と考えてきました.私たちが目指していた方向は間違っていなかったと信じています.しかしながら,地震によって失われた命の数,すべてが破壊された沿岸域の状況を直視すると,価値ある仕事ができたとはとても言えません.
 この地震後は,1)東北地方太平洋沖地震に関する調査研究は,将来の地震予測,地震防災に結びつくことが明確に説明できるテーマに絞って実施すること,2)これから大規模な地震が発生する可能性がある地域における災害予測研究を重点的に実施すること,などを基本方針として活動していきます.また,今までの調査結果を出来るだけ早く公表し,将来の地震の予測と,地震災害軽減に貢献することを改めて確認しました.

 地震後に多くの励ましのメールを頂きましたが,同時に研究結果を周知しなかったことへの厳しい御意見も頂きました.研究成果は積極的に学会等で発表し,その内容はマスコミでもかなり紹介されてきましたが,情報を必要とする人たちには届いていなかったことも大きな反省材料です.

 この地震については,今後多くの研究機関と研究者によって研究されていくでしょう.しかしながら,私たちがやるべきことは,まだ地震が起こっていない地域の地震防災,地震減災に役立つ研究を進め,情報発信を行うことです.次の地震には,「価値ある仕事」と評価されることを目指して,研究を進める決意です.